八重野 充弘

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(注意)作品中、徳川幕府御用金埋蔵伝説に関することは、事実に基づいており、著者が真相と考える
事象が余すところなく書かれていますが、物証に関しては一部フィクションですのでご注意ください。

 1972年の晩冬、武力革命の幻想をいだく極左グループによる南軽井沢の山荘立てこもり事件と、後に発覚した仲間内の大量リンチ殺人事件は、世の中を震撼させた。その陰で起こっていたある出来事が権力の手で闇に葬られ、一人の若者が人生を狂わされた。
 それから47年、自分の居場所を見つけ社会復帰していた男に、再び権力の手が伸びてくる。狙いは47年前に男が放棄した莫大な黄金だった。その秘密を知っているのは2人しかいないはず。敵の情報源は、極左グループの一員だった海外逃亡中の男以外には考えられなかった。


(55ページ)
 古希を迎えていた桜場鋼介は、過去を取り戻すために、敵の懐に飛び込むことを決意する。そのきっかけをつくったのは、彼が副代表を務めるフリースクールの生徒たち。秘密に立ち入ったために危険にさらされていることを彼らは知らない。自分と同じように人生を狂わされかけた少年少女を、鋼介は命をかけて守るつもりだった。そのために、鋼介は生徒たちにすべてを打ち明けるとともに、好奇心旺盛な彼らの知恵を借りることにする。敵の正体もおぼろげながらつかめた。作戦も練りあがった。桜場は意を決して敵の懐に飛び込んでいった。

(56ページ)
 敵の中心にいるのが、99歳のいまも政財界の裏で暗躍する、妖怪のような老人であることがわかった。鋼介はその老人から47年前に自分の身の回りで起こったことのすべてを聞き出す。相手が接触してきた目的もはっきりした。彼は協力するとみせかけて、あくまでことを水面下で遂行しようと目論む敵の裏をかき、すべてを白日の下にさらすべく作戦を練る。これにはフリースクールの3人の生徒が協力した。ただし、現場で動くのは鋼介ただひとり。しかも、24時間敵に監視される身。一発勝負にかけるしかない。峻険な妙義山の山懐で最後の決戦の火蓋が切られた。

(75ページ)